『解体新書』文献編  『解体新書』人物編  『病草紙』  『病草紙』關戸家本
『病草紙』 關戸家本

@ 鼻黒の男
A 小法師の幻覚を生ずる男
B 白子
C あざのある女
D せむしの乞食法師
E 侏儒
F 肥満の女
G 嗜眠癖の男
H 不眠症の女
I 屎を吐く男



鼻黒の男



大和國平群のこほ(郡)り幸山といふところ」におとこ(男)あり、はな(鼻)のさきすみ(墨)を」ぬ(塗)りたるやうにくろ(黒)かりけり、子孫子」あひつぎてみな(皆)くろ(黒)かりけり、」



小法師の幻覚を生ずる男



なかごろ、持病もちたるおとこ(男)ありけ」り、やまひ(病)おこ(起)らむとき(時)は、たゞ四五寸ば」かりある法師の、かみきぬ(紙衣)き(着)たる、あまた(数多)」つれだ(連立)ちて、まくら(枕)にありとみ(見)えけり、」



白子



しろこ(白子)といふものあり、おさな(幼)くより」かみ(髪)もまゆ(眉)もみなしろ(白)く、め(目)にくろ(黒)」まなこ(眼)もなし、むかし(昔)よりいま(今)にいた」(至)るまで、まゝよ(世)にいで(出)くることあり、



あざのある女



ある女かほ(顔)にあざ(痣)といふものありて、あさ(朝)」ゆふ(夕)これをなげ(歎)きけり、あざ(痣)はうちまか」せて人の身にあるものなれども、閑所は」くる(苦)しみなし、かほ(顔)などにつきぬれは」人にまじ(交)りはりはれなどふるま(振舞)ふこと」かな(叶)ふべくもなければ、まことにかたはな」り、」



せむしの乞食法師



ちかごろ(近頃)、宮こ(都)にくび(首)のほね(骨)こは(強)くて」こし(腰)をそらしてひとみ(瞳)をゆる(動)がさぬかぜ」りは、すこしもかしら(頭)をあぐ(上)ることかな(叶)」はず、あけくれ(明暮)うつぶ(俯)きてあり(歩)く乞」食法師あり、」



侏儒



侏儒ときどき(時々)いで(出来)く、、食をこ(乞)ひて京都」をあり(歩)く、わら(童)はベシリ(後)につきて」わら(?)ひの(罵)る、みかへ(見返)りてはらだち(腹立)い(云)へどん(も)」いよいよおこ(烏滸)つきわ(?)らふ、」



肥満の女



ちかごろ(近頃)、七條わたりにかしあげ(借上)する」女あり、いゑ(家)と(富)み、食ゆたか(豊)なるがゆへ(故)」に、身こえ(肥)、しゝ(肉)あまり(餘)て、行歩たや」す(容易)からず、まかたちのおんな(女)、あひ」たす(助)くとい(雖)へどん、(も)あせ(汗)をなが(流)して」あえたく、とてもかくてもくる(苦)しみ」つ(盡)きぬものなり、」



嗜眠癖の男



なま良家子なるおとこ(男)ありけ」り、すこしもしづ(静)まればゐ(居)ながら」ね(眠)ぶる、人のいか(如何)なることをせむも」し(知)るべくもなし、ま(交)じらゐのとき(時)ま」ことにみぐ(見苦)るしかりけり、これも病」なるべし」



不眠症の女



山と(大和)のくに(國)、かつら(葛)木のしも(下)のこほり(郡)に」かたをか(片岡)といふところに女あり、とり立て」いた(痛)むところなけれども、よる(夜)になれ」どもねい(寝入)らるることなし、よもすがら(終夜)お(起)」きゐて、なに(何)よりもわびしきことな」りとぞい(云)ひける、」



屎を吐く男



あるおとこ(男)、シリ(尻)のあな(孔)ゝくて、尿くち(口)よ」りい(出)づ、くさ(奥)くたえ(堪)が(難)たくて、すぢなかり」けり、」



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