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特集−三施設合同勉強会−
●「宏仁会三施設合同勉強会」について
宏仁会小川病院 理事長 北川 宏
●広報公聴委員会委員長を担当するにあたって
宏仁クリニック 院長 冨田 哲也
●広報公聴委員会委員長の交代にあたって
第1期広報公聴(『こうじん』編集)委員会委員長
宏仁会小川病院 院長 吉田 哲
●宏仁会三施設合同勉強会
脳梗塞後遺症患者の在宅介護に向けて経口摂取を
可能にし在宅介護へ移行した一症例
宏仁会小川病院 病棟看護師 山崎 美子
●透析患者の不眠とむずむず脚症候群(RLS)
東松山宏仁クリニック 透析室看護師 古旗 恵子
●脳梗塞後遺症患者の在宅介護に向けて胃瘻栄養にて
在宅介護を可能にしえた一症例
宏仁会小川病院 病棟看護師 中里 留美子
●LMWMの投与法の違いによる凝固系の比較検討
宏仁クリニック 透析技士主任 山口 和彦
●EPOを必要としない維持透析患者の病態・生理
東松山宏仁クリニック 透析技士主任 新井 洋一
●成熟した専門集団の形成に向けて
―職員間の感情トラブルに関するアンケート調査より―
宏仁クリニック 看護主任 武野谷 祐子
●高齢者の肺結核の一症例
宏仁会小川病院 院長 吉田 哲
●「患者さんへの接遇について」講演所感
宏仁会小川病院 事務長 徳竹 勇
●宏仁クリニックの紹介
宏仁クリニック 看護師 大久保 愛子
●人事往来
●第2期新編集委員会の紹介
●編集後記
●「宏仁会三施設合同勉強会」について
◇宏仁会小川病院理事長 北川 宏
宏仁会三施設合同勉強会は宏仁クリニック冨田院長が実行委員長を担当し、平成14年10月6日小川町民会館(リリックおがわ)において開催された。
透析医療の研究発表・肺結核の症例報告を含めた第一部の講評は座長の吉田院長、吉川院長によって行われた。第一部ではその他に脳梗塞後遺症の経口摂取と胃瘻栄養によって在宅介護を可能にした2症例の報告がなされた。治療及び看護の成果 であるこの発表は、今後の病棟体勢への励みとなるもので将来の医療への方向性が示唆された。
今回は、この他に新しい分野の発表があったので主にこれらの発表に関連して感想を述べてみる。新しい試みとして職場の感情トラブル対応が事前のアンケート調査に基づいて研究発表された。医療チームを専門集団として位 置づけ、トラブル対応の基本として「聞き上手」と「寛容」をキーワードとしてその考え方が解説された。私見であるでが「聞くこと」によって対立関係にあるトラブルや患者の直面 する苦悩もある程度軽減し癒される。又、相手の話を否定しないで理解しようとする心構えとその態度は、「寛容」の精神が前提にあってこそ生ずるものである。私達は日常茶飯事にグループや個人間の対立を経験することがある。そのような時でも、人は誰でも完全無欠ではない事を自覚し、更に心を広くして暖かく接しようとする真摯な態度があれば、感情トラブルの一端は氷解するものと考える。
第二部においてホテルニューオータニとの折衝を続けてきた徳竹事務長によって、クラブセンター事務局マネージャー笠原淳一氏が紹介された。笠原氏の演題は「患者さんへの接遇について」のお話で最後まで熱のこもった講演であった。このテーマも感情トラブルと表裏一体の同系統のお話で両者相まっていかに気持ち良く「人をもてなす」迎え入れの姿勢が大切であるかを実際の例をもって詳しく説明された。終わりに貴重な自社の事例を提示し、どのような経緯でトラブルが起きるかを分かり易く問答形式によって示されたが、これは当院が現在すすめている危機管理にも共通 する内容であった。この話は自社例だけに説得力があり今後の参考となるものである。
勉強会におけるこれらの教訓を大事な指針として感情トラブルを減らし、院内の宥和の環境をつくることが安定した医療活動の基盤となるだろう。
その後偶然にも、都立豊島病院でもホテルとの協力を得て、ホテルを手本とした接遇改善プランの実施例が毎日新聞紙上で11月7日報道された。
数年来、勉強会や院内外において言葉使いや接遇のあり方の問題点が指摘されてきた。今回の勉強会においても社会の変化や日常の礼儀上のマナーとして改善すべき点が提起された。これらの貴重な提言に答えて、これをいかに活用して実行に移すかは、今後の私達の大きな課題である。
●広報公聴委員会委員長を担当するにあたって
◇宏仁クリニック 院長 冨田 哲也
広報紙、「こうじん」の委員長が持ち回りにより今年9月から私が担当することになりました。初代委員長であった小川病院吉田哲院長先生に立派な枠組みを作って頂いたので,その規範に乗って二年の任期中の責務を果 たせるように頑張りたいと考えております。昨年の小川病院二十周年記念パーティーで、宏仁会三施設の歩みについてスライドを使ったご案内を行い、出席者に対し、とても纏まった良い医療施設である印象を持っていただいたと考えております。また、当院の透析に従事するスタッフの仕事振りはかなりハイレベルなものであると自負しております。常により良い透析医療を目指して医学雑誌に目を通 しているスタッフの姿をみるにつけ、宏仁会は恵まれていると感じております。
さて、「こうじん」という言葉からどのようなイメージが思い着くでしょう?荒心、荒神、公人、後人、工人、黄塵、紅塵、銅刃、幸甚、等、他に、常用語で無い文字を組み合わせるともっと多くの熟語の創作が出来ると思われる。この「こうじん」が人の心を広く交流させ、より高い観点から物事が見える手段となるように願っています。荒れた人々の硬く閉じた心を耕し、幸せを感じる心になることを高く念じております。最近、朝の連続テレビ小説「まんてん」の音声を聞きながら通 勤している。この「まんてん」という文字は、星が夜空一杯に見られる満天のことであるが、もう一つの満点が取れるようにという言葉が良いのかな?それとも、万店のほうがよいのかな?などと思ったりしている。
簡単ではありますが、委員長就任の挨拶として、この院内紙を通して職員間の意思の疎通 を十二分に行い、更に、充実した医療機関となる一助となるよう努力したいと考えます。就きましては皆様のご協力を頂けることと願っております。
●広報公聴委員会委員長の交代にあたって
◇第1期広報公聴(『こうじん』編集)委員会委員長
宏仁会小川病院 院長 吉田 哲
二年間の委員長の任期期間中、試行錯誤を繰り返しながらも院内情報誌『こうじん』をなんとか7号まで発行することができました。各編集委員をはじめ他の皆さんのご協力に心から感謝致します。
『こうじん』の発行目的に・病院経営に関する方針や重要決定事項の全職員への周知 ・三施設間の連携強化・職員の紹介、意見や情報の交換、親睦を図ること等がうたわれています。職員相互間あるいは縦横間の意思疎通 を図る方法が色々ある中、院内情報誌が果たす役割は大きいものと考えられます。この宏仁会小川病院三施設が発展する過経で今後益々『こうじん』の果 たす役割が増すものと考えられます。
次期の編集委員長に、溢れるほどの個性豊な冨田院長が就任されました。次号『こうじん』からはきっと奇抜で楽しいものが配布されてくるものと楽しみにしています。
皆んなで第2期広報公聴(『こうじん』編集)委員会を大いにサポートし、この情報誌が少しでもより内容豊なものとなるよう大切に育てて行こうじやありませんか。
なお、任期中に、広報活動の他の活動である公聴活動、たとえば患者さんから色々な意見を頂き(アンケート調査など)、その結果 を病院の運営に役立たせることなども重要なことと思われますが手がつかずじまいでした。今後このような活動内容も漸次増やしていきたいものです。
●宏仁会三施設合同勉強会
◇宏仁会小川病院 病棟看護師 山崎 美子
平成12年4月1日より介護保険が導入されたが、家族の受け入れ状況によっては、病状が安定しても自宅には帰れず、介護施設や他の医療機関への転院などを余儀なくされるケースが見受けられる。今回の症例は脳梗塞後遺症患者の在宅介護に向けて、経口摂取を可能にし、在宅介護へ移行した86才の男性である。脳虚血発作以後、転倒する事が多く、歩行不可能となる。ポータブル使用、食事は自立していたが左半身麻痺、意識レベル低下にて入院される。DIV、バルン留置、酸素吸入による全身管理を行う。絶食より流動食と食事を開始するも喋下困難にて摂取出来ずIVHへ移行する。熱発が続き抗生剤の種類を変更、解熱。尿培養施行黄色ブドウ球菌3+でMRSAが認められハべカシン ホスミシンの使用にて消失する。その後、四肢の浮腫出現、ラシックス、アルブミンの使用にて浮腫消失。更に逆流性食道炎、萎縮性びらん性胃炎を指摘されオメプラールを7週間投与。仙骨部褥創、両踵部の水泡形成については体位 交換、全身清拭、処置により短期間で治癒した。徐々に呂律の回らなかった言葉は意思表示を伝えられるまで回復し右上肢麻痺状態であったが運動能力がついてきた。食事も2〜3口の摂取量 であったが徐々に量が増えて行き全粥食摂取可能となりIVHも抜去され退院される。退院后は週4回清拭、出張入浴月2回、電動ベット、エアーマット使用の介護サービスを受けられている。入院中に熱発が続いた為ADL等のリハビリが十分出来なかった事が残念でしたが、患者のフォローに往診を活用中です。今回の症例は、入院当初より家族の全面 的な協力姿勢やその後の献身的な介護姿勢が印象的であり、私たち看護師もその家族の絆の強さ、家族のあり方を勉強させられた一症例でした。
●透析患者の不眠とむずむず脚症候群(RLS)
◇東松山宏仁クリニック 透析室看護師 古旗 恵子
(目的)
維持透析患者の不眠とむずむず脚症候群(RLS)について検討した。
(対象と方法)
当院3施設の維持透析患者238人に睡眠障害と脚のむずむずの調査おこない、またRLSに対してランドセンRの効果 および安全性をPSG検査と透析前血中濃度変化により確認した。 結果:回答が得られた222人中74人(33%)が不眠を訴え、うち37人(50%)は覚醒時眠気を感じていた。また238人中76人(31%)に不眠に対し薬剤が投与され、うち48人(64%)はハルシオンRであった。不眠のタイプは入眠障害が多く、脚のむずむず感は回答が得られた221人中87人(37%)でうち36人(41%)は不眠を訴えていた。また非糖尿病患者が59人と糖尿病患者に比べ多く、年代別 では40代15人50代30人60代16人と中高年が多く訴えていた。また不眠を訴えたRLS9例にランドセンRを投与しPSG検査が施行できた2例では、睡眠中の四肢不随意運動が50%以上減少することが確認され、全例で睡眠障害が改善した。また5例において6ケ月間ランドセンR投与中の透析前血中濃度は蓄積性を認めなかった。
(結 語)
・透析患者の不眠の原因にRLSも考慮する必要性が考えられる。
・RLSに対しランドセンRは有用である。
・透析患者にランドセンRを長期投与しても安全である。
●脳梗塞後遺症患者の在宅介護に向けて胃瘻栄養にて
◇宏仁会小川病院 病棟看護師 中里 留美子
73歳 パーキンソン症候群 75歳 多発性脳梗塞により左半身麻痺入院時の所見及び入院中の経過:80歳女性気管支炎による熱発意識障害があり、血液検査の結果 、CRP(20.88)WRC(12,640)為、入院となった。吸引時、黄色粘調痰が見られ、痰の検査提出、MRSA陽性と判明バクトロバン軟膏治療で改善されず、ハべカシン投与によりMRSA陰性となる。55病日後、CRP(0.08)WRC(7,330)検査結果 の改善が見られる。入院中、ヨーグルト、水分含ませ るもむせりあり、IVHによる栄養補給後胃瘻造設予定となる。小川日赤にて胃瘻造設のため転院、当院再入院後、胃瘻トラブル無く経過。現在、病院で行われている栄養療法は1)中心静脈栄養法 2)経鼻栄養法どちらも一般 的な方法であるが在宅管理を行うには手技及び経済的にも問題が多く、経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)は経口摂取できない患者のための、もう一つの栄養方法である。これは開腹手術をしないで腹壁と胃壁との間に瘻孔を形成する。内視鏡治療手技で直接、胃にカテーテルを通 して栄養剤を注入するもので1と2に比べ管理しやすいと言われている。
胃瘻造設の方法
1イントロデューサー法
2プル法
3ブッシュ法
本症例の術式はプル法(ボタン式)で胃瘻を造設アメリカでは、40万人にものぼる人が胃瘻を利用しています。日本でも今後、長期療養が認められない医療情勢の中で、有効な栄養療法の一つとして、注目されることは間違いありません。そして胃瘻は的確な管理とケアーが行われれば患者のQOLを向上させる栄養療法の決定打となるでしょう。
●LMWMの投与法の違いによる凝固系の比較検討
◇宏仁クリニック 透析技士主任 山口 和彦
<LMWH(低分子量ヘパリン)の特徴>
活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の延長作用が弱い。
平均分子量は約4.000〜6.000とUFHより小さい
抗第Xa因子活性/抗IIa因子活性の比は3.8〜6.4と高い(in vitro)
<LMWHの3通りの投与法>
1.単回投与法(開始時全量をV側よりワンショットする)
2.分割投与法(開始時1/2、2時間後1/2をV側よりワンショットする)
3.持続投与法(開始時1/5をワンショット、4/5を終了時までそれぞれA側より持続注入する)
(結 果)
1.APTTで比較
単回投与法では、30分後と4時間後の差:12.1秒
分割投与法では、30分後と4時間後の差: 2.7秒
持続投与法では、30分後と4時間後の差: 2.4秒
2.第Xa因子活性で比較
単回投与法では、30分後と4時間後の差:50.8%
分割投与法では、30分後と4時間後の差:27.3%
持続投与法では、30分後と4時間後の差:13.3%
(結 語)
LMWHの開始時全量ワンショット投与法は、出血の危険性のある症例への投与法としては注意を要すると思われた。又、後半APTTの減少、第Xa因子活性の上昇がみられた。LMWHの分割投与法と持続投与法にAPTT、第Xa因子活性に大きな差は認められなかった。
●EPOを必要としない維持透析患者の病態・生理
◇東松山宏仁クリニック 透析技士主任 新井 洋一
(目的)
EPOを必要としない患者と、EPOを必要とする患者の差異について検討した。
(結果)
維持透析患者200人中過去1年以上EPO使用しない30例は、EPO週1500単位 以上使用した44例に比べ、男性に多く、透析歴が長期で、へマトクリットは高値を示し、若干血中EPO値が高かった。
後天性腎嚢胞とEPOは、両群に差を認めなかった。アイソトープ標識したEPOがEPO受容体に結合すると、発光する測定系を用い、EPOを阻害する物質について検討した。EPO非使用群はEPO使用群に比べ、発光量 が多くEPOを阻害する物質が少なかった。しかしながら阻害物質について特定は出来なかった。貧血と鉄の代謝について、血清鉄、フェリチンは両群差を認めなかったが、TIBC、血清トランスフェリンレセプターは非投与群が有意に高値を示した。231人中153人(66.2%)に降圧薬を処方されていた。降圧薬投与者153人中EPO非使用者は21人、(13%)一方降圧薬非役与者78人ではEPO非使用者は28人(35%)と有意に多い人数だった。尚、R-A系降圧薬と貧血との関係は、統計的有意差には至らなかった。3ケ月以上Ht35%以上維持できる症例と3ケ月以上EPO高用量 投与例を検討した。EPO高用量群は平均週8250単位投与しているにもかかわらずヘマトクリット値は28.8%、一方EPO非投与群40.6%であった。透析歴、血中EPO濃度に差はなかったが、EPO非投与群の総カル二チンは正常値範囲内であったが、EPO高用量 群は正常下限以下であり、更にハプトグロビン値も若干低値を示した。
(結 語)
EPOを必要としない患者はEPOを必要とする患者に比べ、内因性EPOが比較的高値である。EPO阻害物質が少ない。カル二チンは正常値を示す。ハプトグロビンが高い傾向にある。
●成熟した専門集団の形成に向けて
◇宏仁クリニック 看護主任 武野谷 祐子
昨年、宏仁会は透析医療を基盤に創立20年目を迎えております。医療社会は多職種の資格制度に基づく人員で構成されています。同一職種内においても、異なる職種でも、対立、不平、不満などの人間関係のトラブルが起き易い所でもあります。その感情トラブルを放置せず反省材料として前向きに解決を図り、成熟した専門集団としての共通 目標達成するために、当院3施設職員72名にアンケート調査を行いました。
<アンケートの結果より>
私たちは日々努力していますが、その努力の結果が旨く現れない事が重なると、感情的になり冷静さを欠いた行動をとるようになり、言い訳が多くなったり、八つ当たりするなどの行動に出たりすることがあります。その事が感情トラブルの原因につながるのではないでしょうか。これら全ての事を、自分に置き換えて考えれば誰もが不愉快に感じるはずです。自分が不愉快と感じた事は、相手にもしないという意識を持ちながら行動すれば感情トラブルは改善されると考えられます。
感情トラブルの対応策は、相手の言う事を相手の立場に立ち理解しようとする。また、相手に対し共感できる聞き上手である事が大切なのではないでしようか。さらに大切な事は、相手の話を否定しないで聞いて、理解しようとする寛容の心を持つ事が必要と考えられます。職員同志、職員と患者さんと、全ての人間関係向上のため、職員一人一人の能力開発を図り、職場を活性化させ、常に時代の先端を行く技術、技能を駆使した、心のある温かい医療サービスを提供することが、成熟した専門集団としての共通 目標だと考えられます。
●高齢者の肺結核の一症例
◇宏仁会小川病院 院長 吉田 哲
患者:0.K.92才、女性。
主訴:食思不振、微熱。
既往歴:特別な疾患なし。
臨床診断:
1.肺結核
2.緑膿菌尿路感染症
3.痴呆。
経過概略:平成14年6月から某老人施設に入所のところ7月中旬から食事摂取不能となり、某院へ食思不振症、尿路感染症及び脱水症の診断で入院。尿路感染症の改善及び食事摂取が可能となり、老人施設への復帰までの一時的入院を依頼され、7月末当院へ入院。入院時、微熱あり。意思の疎通 なく、咳・痰の呼吸症状及び胸部理学的所見なし。但し、胸部レ線写真上両肺野に陳旧性陰影を疑わせる陰影を認めた。第24病日に、入院当初提出の胃液の抗酸菌培養結果 が陽性との報告及びその培養菌を用いた結核菌群直接検出法(directTB)で陽性のため、肺結核の確定診断のもとに結核専門の病院へ転院とした。本症例のように、呼吸器症状(咳・痰)がなくとも、超高齢で、食思不振・栄養状態不良かつ微熱がみられ、胸部レ線上陳旧性陰影が疑われても異常陰影が認められる際には、肺結核も疑い検痰が不可能の時には少なくとも胃液の抗酸菌検査を行うことの重要性を痛感させられた症例である。また、一般 外来さらに入院ベッドを持つ医療施設には常 にこのような結核菌を排出する患者が出入りすることを忘れてはならない。事務職員を含め患者さんと接する全ての医療従事者自らが結核菌による暴露、感染、さらに発病を避けるため予防的処置(状況に応じてマスクの着用や手洗いの励行等)のほか定期的な検診(胸部レ線写 真撮影、ツ反検査等)を受けることの重要性を改めて思い起こさせられた症例である。
●「患者さんへの接遇について」講演所感
◇宏仁会小川病院 事務長 徳竹 勇
今年の「宏仁会3施設合同勉強会」は、透析医療の研究発表の他に、「顧客サービス」という概念がこれからの医療社会になくてはならないものとなってきており、また、患者さんへの接遇の優劣が延いては病院の運命を握っていると言っても過言ではない時代に入っている。
このような状況を踏まえた中で、北川理事長の紹介でホテルニューオータニのニューオータニクラブセンターに講演を依頼し、事務局マネージャー笠原淳一氏による第2部の特別 講演となった。
ホテルと病院の共通点を見据えながらの熱のこもった講演であり、プリントを用意され語源hospes(もてなす)という意味からの挨拶、気配りのある対応への方向性を示された有意義な講演であった。
当院に来られる一般の外来、入院患者さんは、透析患者さんを含め比較的お年寄りを中心とした地域密着型の患者さんが中心で、この辺にも対応の難しさがあるのではないかと思う。講演を通 してサービスの提供は、本来人間のもつ基本的な挨拶、言葉遣い、動作をもってすれば「親切にもてなす」という最も大切とされるサービスができるのではないかと思うが、しかし、これが出来ないところにサービスの複雑さ、難しさがあり、個々人が持っている人間性にかかわるものではないかと思う。
ホテルと病院とでは来られる「客」の目的は違うが、ここへ来て診察してもらってよかった。ここへ入院してよかった。と言われるようになれば「人をもてなす」という精神は全く同じであると話の中から受け取りましたが、職員各自が患者さんへの日々の挨拶、言葉遣い、態度をこの機会に振り返って見てはどうでしょうか。
●宏仁クリニックの紹介
◇宏仁クリニック 看護師 大久保 愛子
当クリニックは、高坂の駅から7〜8分と近く、電車で通って来られる患者さんもおられます。外来透析患者60数名と一般 外来の医療を行なう施設です。冨田院長と12名のスタッフで勤務しております。一階は診察室、待合室、薬局、事務室、二階はトイレ、機械室、スタッフの休憩室、透析患者のロッカー、ロビー、三階は透析装置18台の透析室です。男性は山口、田野風、松井の3名、女性は吉村、佐藤、武野谷、太田、高木、森下、小山内、大久保の8名です。
お昼ご飯は、畳の休憩室で一つのテーブルを囲んで家庭的雰囲気の中で一緒に摂ります。時には誰かが旅行のお土産としてふりかけや海苔の差し入れをしてくれます。患者さんも煮物や漬物を持ってきてくれたりします。
私たち「看護師」の紹介ですが、まだなんとなく慣れ親しんだ「看護婦」という名称から抜け出せていない気がしております。武野谷さんは、極めてスレンダーで肌が白く、チャ髪で一見すると、白い〇〇が人間に生まれ変わったのではないかと思われる印象を受けます。しかし、実際は主任看護師で気の優しい、それでいて厳しいナースです。太田さんは、瞳が大きいので、ご両親がひとみと名付けた八頭身です。高木さんは、常時外来を担当し、通 院患者さんに親しまれています。森下さんは、主婦であり志して看護師の資格を取った頑張り屋さんです。小山内さんは、華奢な身体で中性脂肪が正常範囲以下で、ちょっと太めの私には羨ましい存在です。
さて、院長はアルコールに弱いのが「玉に瑕」ですが、もう少し、アルコールを控えたら模範生になれるとスタッフ一同心より祈念しているところです。
一方、お酒は一滴も飲めない薬剤師の吉村さん、薬剤の管理は勿論ですが階段の踊り場に、いつも、季節の花を生けて下さっております。事務の佐藤さん、この道何十年の大ベテランです。冬の寒い季節には自家栽培の野菜で作る漬物、これが特に最高です。もう一人、唯一花の独身男性、事務の松井君は理事長と同郷の長崎五島列島の出身です。写 真に写した容姿でお解り頂けると思いますが、20年から30年前なら、皆、楊貴妃かクレオパトラにも劣らぬ 絶世の美女軍団!?ばかりです。そして、今も、モテモテのチョビ髭の田野風さん、仕事きっちりの山口さんの看護スタッフです。勤務の都合上、なかなか全員揃う事が有りませんが、四季折々の宴会などで、冨田院長が一杯飲んだ勢いで言われた「高坂のスタッフが最高だ」の言葉や患者さん達の「子供が成人式なの」、「結婚した」、「孫が生まれた」等々、嬉しそうに話して下さる会話を励みに今日も頑張っています。
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